o(オルト)-クレゾールは、化学式 CH3C6H4(OH) の有機化合物です。
2-メチルフェノールとも呼ばれます。
常温にて無色の固体であり、他の化学物質の製造時によく使用されます。
o-クレゾールはフェノールの誘導体であり、p-クレゾールとm-クレゾールの異性体です。
o-クレゾールの製造
o-クレゾールは、メタノールを用いたフェノールのメチル化によって製造されており、この製法は、アメリカ・ヨーロッパの供給量の約3分の2を占めます。
C6H5OH + CH3OH → CH3C6H4OH + H2O
これに加え、o-クレゾールは、石炭からコークスを生産する際に得られるコールタールや、石油精製後の残渣物からも抽出されます。
ちなみに、石油残渣物には、数重量%のフェノールおよび異性体クレゾールが含まれています。
ビーバーとホワイトシダー
o-クレゾールは、自然界では、アメリカ・ヨーロッパに生息するネズミ目ビーバーの分泌腺から採取され、ビーバーが食料とするホワイトシダーに含まれています。
ヒマシ油に含まれる化合物の一つであり、タバコの煙の成分でもあります。
o-クレゾールの用途
o-クレゾールは、主に他の化合物の前駆体として使用されます。
- o-クレゾールの塩素化およびエーテル化によって、2-メチル-4-クロロフェノキシ酢酸(MCPA)といったような、商業的に成功している除草剤の成分となります。
- また、o-クレゾールの硝化によって、ジニトロクレゾールというポピュラーな除草剤となります。
- o-クレゾールのコルベシュミットカルボキシル化によって o-クレソチン酸という薬剤の中間体が得られます。
- カルバクロールというオレガノの主成分は、プロペンとo-クレゾールのアルキル化によって得られます。
- 筋弛緩剤のメフェネシンは、o-クレゾール由来のエーテルです。
人体への影響
クレゾール類への暴露は、ほとんど有害ではない非常に低いレベルとされていますが、フェノール類と同様に皮膚刺激性物質であるため、皮膚に触れた場合はすぐに水で洗い流すのが良いでしょう。
クレゾールは、呼吸したり、摂取したり、非常に高いレベルで皮膚に塗布したりすると、有害な場合があります。
(※環境省ウェブサイトによると、死に到ったケースも報告されています。» 化学物質の環境リスク評価 第5巻)
短時間に大量のクレゾールを吸い込むと、鼻や喉に炎症を起こします。
これらの影響を除いて、クレゾールを低レベルで長期間吸入した場合の影響については、ほとんど知られていません。
マウスによる経口摂取の急性LD50(50%致死量)は344mg/kgという報告があります。
Helmut Fiegein “Cresols and Xylenols” in Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry” 2007; Wiley-VCH, Weinheim.